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2025/07/09 15:50~2025/07/09 17:35

生物科学セミナー 第1524回/Biological Science Seminar 第1524回

地球上には様々な光合成生物が生息しており、陸上では植物が、水圏では海藻や海草、そして膨大な量の微細藻類が二酸化炭素の吸収・固定化を行っている。多くの微細藻類の葉緑体には、“ピレノイド”と呼ばれる構造体が見られ、そこには二酸化炭素固定酵素であるRubisCOが集積している。そのピレノイドに濃縮した二酸化炭素を届けることで、効率的に二酸化炭素固定を行っていると考えられている。葉緑体は細胞内共生により進化したオルガネラであり、シアノバクテリアに起源をもつ。しかし、現存のシアノバクテリアにはピレノイドが存在しない。つまり、ピレノイドは細胞内共生により引き継がれたのではなく、それぞれの藻類で独立に獲得・進化した可能性がある。多様な藻類で普遍的に見られるピレノイドが収斂的に進化したものであるなら、そこで働く二酸化炭素濃縮機構には共通性や多様性があるのだろうか?近年、一部のモデル微細藻類でピレノイドの研究が大きく進んでおり、ピレノイド形成に関わるタンパク質や二酸化炭素濃縮に関わる酵素などが報告されている。本セミナーでは、これらの先端研究に加え、我々の行っている研究を基に、ピレノイドで働く分子機構の多様性と収斂進化について考えてみたい。参考文献Moromizato R, Fukuda K, Suzuki S, Motomura T, Nagasato C, Hirakawa Y. (2024) Pyrenoid proteomics reveals independent evolution of the CO2-concentrating organelle in chlorarachniophytes. Proc. Natl. Acad. Sci. USA. 121(10) e2318542121平川泰久 (2023) クロララクニオン藻のピレノイド (Pyrenoid of chlorarachniophytes). Plant Morphology 35: 35-39.

📍 理学部2号館223号室及びZoom