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題目:TDP-43の多量体化が担う転写制御とALS/FTLD病態への関与Title:TDP-43 Multimerization Controls Transcription: Implicationsfor ALS/FTLD Pathology 講師:大岩康太郎 ソーク研究所遺伝学教室 博士研究員,環境医学研究所病態神経科学 客員研究者日時:令和8年7月16日(木)15時00分より 場所:環境医学研究所 南館大会議室(東山) 筋萎縮性側索硬化症(ALS)は、運動ニューロンが選択的に障害される進行性・致死性の神経変性疾患であり、現在も根本的な治療法は確立されていない。ALS患者の約97%の神経細胞では、RNA・DNA結合タンパク質TDP-43が細胞核から細胞質へ異常移行して凝集体を形成するという特徴的な病理変化(TDP-43病理)が観察される。TDP-43はN末端ドメインを介して「多量体」と「単量体」という2つの状態を切り替えており、講演者はこれまでにそのバランスの崩壊がTDP-43病理を再現することを示した。多量体化がRNAスプライシングに重要であることは知られている一方、TDP-43による転写制御の仕組みはほとんど解明されていなかった。今回の講演では、TDP-43多量体化の生理的役割に迫った最新の研究成果を紹介する。講演者は、近接するタンパク質を網羅的に標識・同定できる「splitTurboID法」を独自に応用し、TDP-43多量体および単量体とそれぞれ近接するタンパク質を初めて系統的に同定した。その結果、多量体はRNA結合タンパク質と、単量体はDNA結合タンパク質と選択的に近接することが明らかになった。さらに、クロマチン免疫沈降(CUT&Tag)・クロマチン開口性解析(ATAC-seq)・トランスクリプトーム解析(RNA-seq)の統合解析により、TDP-43多量体・単量体の平衡状態がTDP-43のRNAスプライシングだけでなく、DNAへの結合と転写開始を制御していることが示された。加えて、ALS/FTLD患者の剖検脳組織においてもターゲットとなる転写因子に関連する異常が確認された。これらの知見は、TDP-43病理に伴う転写制御の破綻がALS/FTLDの病態の一端を担うという新たな概念を提唱するものである。【参考文献】Oiwa K.,et al. Science advances, 9(31) : eadf6895 (2023)