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2025/06/28~2025/07/01

全国大学国語国文学会・第131回 令和7年度 夏季大会(令和7年6月28日(土)・29日(日)・30日(月)、二松学舎大学九段キャンパス+オンライン)※要申込

詳細は以下リンクより。https://zenkoku-sjll.org/conference/information/日時:令和7年6月28日(土)・29日(日)・30日(月)(30日の文学実地踏査は各自・各グループでお回りください)会場:二松学舎大学 九段キャンパス (〒102-8336  東京都千代田区三番町6-16)○会場とZoomによるハイブリッド形式で行います。■大会テーマ日本文学史の再構築――ヨーロッパの視座から―― 近年、人文科学のさまざまな分野で、国際化が推進されている。本学会においても、「国際日本学の動向」(『文学・語学』第二二四号)における諸外国の研究動向の紹介をはじめ、国際特別企画(二〇二二年度冬季大会・二〇二三年度夏季大会・二〇二三年度冬季大会)を通して、日本の文学語学研究の国際化を進めてきた。 こうした実績を踏まえ、本シンポジウムは、フランス日本学会・イタリア日本学会の協力を得て、両学会を代表する講演者を迎え、ヨーロッパの日本学の視座から日本文学史と日本の文学語学研究のありようを問いなおし、日本の文学語学研究の国際化に向けて新たな視座を切り拓いていくことを目的とする。 時代とジャンルを越えて、さまざまな分野の研究者が集う本学会の特性を生かして、会員諸氏とともにヨーロッパ諸国における日本学の教育研究状況や問題意識を共有し、ヨーロッパの日本学と日本国内の文学語学研究とをつなぎ、旧来の枠組みを越えた新たな議論の生まれる場としたい。コーディネーター/共同討議司会  大東文化大学教授  藏中しのぶ■プログラム第1日 6月28日(土) 10:30~12:00代表委員会 九段一号館 四〇一教室12:10~13:00委員会 九段一号館 四〇一教室13:00~会場 一号館中洲記念講堂受付(Zoom開場 13:15~)13:30~開会学会代表挨拶 大東文化大学教授 藏中しのぶ会場校挨拶  二松学舎大学文学部長 五月女肇志13:45~17:00シンポジウム コーディネーター・共同討議司会   大東文化大学教授  藏中しのぶ            総合司会 二松学舎大学専任講師  長谷川豊輝趣旨説明 コーディネーター  大東文化大学教授 藏中しのぶ●「繁昌記」再考:近代日本における都市表象の系譜 ――永井荷風を一例としてナポリ東洋大学准教授  ガラ・マリア・フォッラコ司会:成蹊大学教授  大橋 崇行 明治時代は、近代国家の形成と西洋文化の導入を背景に、文学の観点から、新たな価値観と表現形式を追求する動きが強まった時期である。この過程で、従来のいくつかの文芸は次第に文学的な価値を失い、日本文学の正典化が進められた。そうした中で、特定の作品やジャンルがキャノンから排除されることもあり、「繁昌記」はその一例である。「繁昌記」は都市の繁栄や庶民の生活を描いた作品群であるが、明治文学の新しい理念とは相容れないものとされ、文学的評価を受けることは少なかった。 「繁昌記」は江戸から東京への都市の移行期に、商業や文化の中心地としての都市の姿を活写している。形式の古さや風刺的な内容ゆえに、教育的観点からも問題視され、若年層への影響が懸念された。しかし、これらの作品は一定の読者を持ち続け、都市文化に根差した文学として生き続けた。とりわけ、都市を主題とする作家たちには強い影響を与え、「繁昌記」的表現が創作に生かされた例も多い。 その代表が永井荷風である。荷風は独自の感受性を持ち、「繁昌記」の都市描写から多くを学んだ。荷風が東京の色々な町風景を描いた『腕くらべ』や『濹東綺譚』を執筆する際には『東京新繁昌記』等を参照し、都市の空間と人々の営みを描く手法に大きな影響を受けた。荷風の作品には、都市の風景のみならず、そこに生きる人々の内面や時代の空気までもが緻密に描き出されている。 「繁昌記」の伝統は明治後期から変容を遂げ、当初の風刺や独特の文体は次第に廃れていった。観光や都市開発といった社会的動向により、内容はより商業的・実用的なものへと変化し、文学的独立性は失われていった。しかしながら、「繁昌記」が残した都市表象の技法や視点は、その後の都市文学に受け継がれ、今日においても再評価の余地を残している。 「繁昌記」の研究は、都市空間から明治文学を読み解く鍵として重要である。本報告では、過去二十年にわたるヨーロッパ、特にドイツ・イギリス・イタリアの「繁昌記」研究を踏まえて、永井荷風と彼の都市的作品群を事例として取り上げ、都市文学における「繁昌記」再評価の試みを行う。●『源氏物語』における「もののあはれ」――外部からの再検討の試みパリ・シテ大学教授  ダニエル・ストリューヴ司会:慶應義塾大学教授  津田 眞弓 「もののあはれ」について多くの研究が存在するが、その多数は本居宣長の「源氏物語」論の影響下にあって、この用語を『源氏物語』を解釈する鍵の美的概念として論じきた。本発表では、このような後世の解釈の系譜をいったん括弧に括り、平安時代中期におけるこの用語の本来的な意味に焦点を当てたい。『源氏物語』とそれ以前の文献における「もののあはれ」の用例を分析し、その意味と用法について検討する。 まず『土佐日記』冒頭と『大和物語』四十一段等の早い例を検討し、これを踏まえて『源氏物語』の用例十七例のうち、有意なものを取りあげ、自然であれ、人事であれ、「もののあはれ」という言葉から連想されるイメージについて論じる。 「もののあはれ」を具体的な文脈の中で捉え、原文の精読から読み取れるものを整理したい。特に同じ文脈で共起する頻度が高い「をかし」や「面白し」との関連性についても論じる。 さらに、「もののあはれ」の口語訳や英語・フランス語訳について検討を加えたい。多くの場合は「もののあはれ」をメランコリー(melancholy)や哀しみと同一視する傾向が見られるが、この「もののあはれ」の解釈が『源氏物語』の受容にどのように影響するのかという問題を取り上げる。 これらの検討を通じて、『源氏物語』における「もののあはれ」の意義についてまとめたいと思う。●「日本の『文学』概念」再び ――ジャンルと文体様式を問い直す国際日本文化研究センター名誉教授  鈴木 貞美司会:二松学舍大学専任講師  長谷川豊輝 前近代日本で「文学」は漢詩文の範囲を指してきたので、和歌や物語が「文学」と呼ばれたことは皆無だった。ところが、明治期に「文学」の概念(concept)が、近代欧語"literature"の意味に切り替わった。それも短いあいだに二つの概念が生じたため、「日本文学」に漢文を入れるかどうか、範囲を人文学とするか、抒情を本質とする「美文学」に絞るかが問われた。いまだに解決しているとは言い難い。 その問題を『日本の「文学」概念』(一九九八)にまとめたのち、わたしは二〇世紀西欧文芸思潮の受容が古典評価にはたらいたことに関心を向けた。興福寺の僧侶が法相宗の教義に基づいて編まれた説話集『今昔物語集』の研究書を芳賀矢一が一九一三年に刊行するに際し、『グリム童話』の国際的ブームに便乗して日本の民話集の代表のように喧伝したことや、一九二〇~三〇年代、意識の変化を内在的に随想形式で書く「心境小説」が流行し、それをヒントに池田亀鑑らが平安時代に自照的な「日記文学」という新ジャンルを発明したことを示しえた。「日記」「随筆」「説話」など中国渡来の語の意味が組み替えられてきた経緯の解明も、あたう限り当代に戻って個々の作品の発現の現場に迫る作業の一環をなす。 作品それぞれの文体(style) に緩やかにはたらく規範様式(written modes) の整理も必要だろう。日本では古代から漢文(古典中国語) を公用語とし、その下で多様な漢文書き下し体と和文体が展開した。院政・鎌倉時代には公用語に変体漢文があふれ、反面、和漢の修辞をとりあわせる様式が開発された。国家が分裂した戦国時代、芸能に民間の口語体が流通し、お触書も日本語の箇条書きで出はじめた。 ところが、明治以来、第一線の学者が日本語を優先して文学史を考える癖をつけてしまった。西欧で長く知識人の国際共通語だったラテン語に換えて、自民族の一般民衆(people) の話し言葉をベースに標準語を整えた世俗語革命、その「国語」の思想が刷り込まれたためである。前近代の文芸文化を振り返るには、今日なお、その西欧近代の眼鏡を外すことが問われている。第2日 6月29日(日)10:00~受付(Zoom開場 10:15~)10:30~15:10研究発表会 A・B 2会場A会場 九段三号館 三〇二一教室10:30~11:55●日本語史における[状況ヲ]の確立メカニズム  名古屋大学大学院生  山下大希●河東碧梧桐における「文」の変容――明治三十年代前半、俳文から写生文へ――  富山大学准教授  田部知季11:55~13:00休憩13:00~15:10●「蛇」と「鳥」/スサノオ論――『言霊の天地・宇宙・神話・魂を語る』における鎌田東二と中上健次――  佼成高等学校非常勤講師  冨田陽一郎●近代国語国文学界における文学史研究の始発とその意義――私立言語取調所と東京学士会院――  山梨英和大学助教  天野早紀●角川源義の『白山』掲載句の研究――中本恕堂との関係――  上智大学准教授  角田佑一B会場 九段三号館 三〇三一教室10:30~11:55●アーノルド・ローベル「お手がみ」の生成過程を読む――国語・図画工作科の教科横断的な学習におけるスケッチの活用――  名古屋大学大学院生・名古屋市立東丘小学校教諭  勝倉明以●「暗部屋の女御」考――『栄花物語』における藤原尊子の描写について――  二松学舎大学非常勤助手  大村美紗11:55~13:00休憩13:00~14:25 ●覚一本『平家物語』師長流罪譚における先行作品摂取の検討  二松学舎大学大学院生  嶋村健児●竹河巻における月の在り方――正編から宇治十帖へ――  学習院大学大学院生  田島文博15:40~16:40A会場 九段三号館 三〇二一教室学会三賞授与式総会大会運営委員長挨拶  二松学舎大学専任講師  長谷川豊輝閉会の辞         大東文化大学教授  藏中しのぶ