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植物が遺伝的多様性を維持する戦略の一つに、雄花(♂)と雌花(♀)を別々の個体に分ける「雌雄異株化」がある。雌雄異株植物の多くは性染色体をもち、XY型の場合には、Y染色体にオスを決定する遺伝子が存在する。性染色体は、もともとは1対の常染色体から進化したものであり、時間とともにY染色体の分化が進行し、X染色体とY染色体の大きさや構造が異なる「異形性染色体」へと進化した。ナデシコ科の草本植物ヒロハノマンテマ(Silene latifolia)は、異形性染色体をもつ植物の典型例として古くから研究対象となってきた。Y染色体には約500 Mbに及ぶ大規模な組換え抑制領域が存在することから、性決定遺伝子の同定は長年にわたり困難とされてきた。私たちは、重イオンビームによる突然変異誘発を用いてこの巨大Y染色体を詳細に解析し、雌ずいの発達を抑制する性決定遺伝子(Gynoecium Suppressing Function on Y:GSFY)を同定した。GSFYは、シロイヌナズナにおいて雌ずいの矮小化に関与するCLAVATA3遺伝子のオーソログであることが判明した。また、性染色体の進化過程において、X染色体ではCLAVATA3オーソログの機能喪失が生じ、Y染色体からは雌ずいの発達を促進するWUSCHELオーソログが失われていたことも明らかとなった。これらの知見は、これまで未知であったX染色体の性決定への関与を示唆する初の証拠である。さらに、GSFYはSilene属が誕生する過程で遺伝子重複によって出現し、その後、Silene属全体にわたって保存されてきたことが明らかとなった。しかしながら、700種を超えるとされるSilene属の中で、GSFYが性決定遺伝子として実際に機能しているのは、S. latifoliaとその近縁4種のわずか5種にとどまる。このことは、GSFYが保持されていても性決定遺伝子としての役割を果たすには特定の条件が必要であることを示唆している。本セミナーでは、GSFYが性決定遺伝子として機能するための条件についても、最近の研究成果を交えて紹介する予定である。参考文献1. Kazama Y. et al. (2022) A CLAVATA3-like gene acts as a gynoecium suppression function in White campion. Mol.Biol.Evol. 9, msac1952. Kazama Y. et al. (2023) Evolution of sex‐determination in dioecious plants: From active Y to X/A balance?. BioEssays 45, 2300111
📍 理学部2号館223号室及びZoom