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植物が生産する代謝産物は100万種にも及ぶとされ、この化学構造の多様性の大部分を占めるのは、植物系統毎に独自に獲得された特化代謝産物である。これらの代謝産物の中には、花粉媒介者の誘因、害虫や病原菌といった外敵に対する防御など、植物の環境適応に貢献するものが多い。また、薬用植物の薬効成分や作物の中毒成分の様に、植物特化代謝産物の中には人の健康に有益な化合物、逆に有害なものも存在している[1]。そのため、植物が特化代謝産物を生産する仕組みを理解することは、植物科学だけでなく、農学や薬学、食品科学など、様々な研究分野に波及効果をもたらす。しかしながら、まだ特化代謝を担う分子機構の全容解明には至っていない。 我々は、植物特化代謝産物の中でもフラノクマリン(Furanocoumarin: FC)類と呼ばれる化合物群に着目して研究を進めてきた。FC類は広い生物種に対して毒性を示す化学防御物質であり、主にセリ科、ミカン科、クワ科、マメ科が生産する。セリ科に関しては、FC類の化学構造の多様化が、この植物系統を特異的に捕食するチョウ目昆虫に対する防御に貢献していると示されている。ミカン科においては、FC類は人に対して有害な作用を示す柑橘成分として知られる。このように、FC類は様々な分野で研究されてきた歴史がある。我々は、植物のFC生産機構の解明のため、トランスクリプトーム解析や代謝物解析、また生化学的解析や3Dモデリング解析といった多様なアプローチを用いて、植物がFC類を生合成する上で重要な酵素遺伝子を複数同定してきた[2-4]。さらに分子進化的解析によって、FC高生産する植物科はそれぞれ独自にFC生産能を獲得したことを提唱した[5]。本セミナーでは、このようなFC生合成に関する知見に加え、生産種自身が中毒にならずにFC類を高蓄積する仕組みについても考察することで、植物が特化代謝産物を活用した化学防御機構をどのように発達させてきたのかについて包括的に議論する。
📍 理学部2号館223号室及びZoom